自転車乗り、サイクリストのための栄養アドバイス。
私は競輪選手を20年間していました。
競輪は特殊だから一般的な自転車乗りと考え方が違うんじゃないの?と思われがちですが、そんなことはありません。
確かに競輪という競技だけで考えたら普通のサイクリングとは全く違いますが、競輪選手もロードレーサーで200km以上のロングライドをしたり、峠を超えたり、景色を見ながらのんびり長時間走ることもあります。
そんな経験の中から、一つの目安としてアドバイスしたいと思います。
まず運動する上で一番大切なエネルギーは糖質のエネルギーですね。
誰でも知っています。
運動するなら糖質をしっかり摂りましょう!
っていうのは間違いです!!!!
糖質は運動エネルギーの第一候補ですが、唯一ではありません。
車のエネルギーはガソリンというのが一般的ですが、ガソリンが無くても走れる電気自動車や、ガソリンも使うけど他のエネルギーも使って走るハイブリッド車もあります。
人間の身体も複雑で多様なエネルギー機構を備えているので、一つのエネルギーが足りなくなったからと言って動かなくなることはありません。
要は目的別に一番効率の良いエネルギー機構で運動をするのが一番いいと言うことです。
今回はロードレーサー向けのエネルギー機構を考えたいと思います。
ロードレーサーと言えども様々な体質の方が様々な目的を持って乗っています。
10代の若者から70代より上の方もいます。
単純に自転車を楽しく健康的に乗りたい人や、肥満解消を目的としている人、レースに出場したい人、レースで上位に入りたい人など様々です。
ここではざっくり2つの目的別に分けて説明したいと思います。この二つは栄養学的にも方向性が真逆になるので分けざるを得ないのです。
①楽しく自転車に乗り自分のペースで頑張りつつも極限までのパフォーマンスを求めない人。
②とことん実力を高めたい、レースで上位を目指したいなど極限まで突き詰めたい人。
一般的には①の方が多いと思うのでそちらから説明します。
①の人は車で言うハイブリッドカーや電気自動車タイプのエネルギー機構を目指すべきです。
ガソリンをほとんど使わないので最大パワーは発揮しにくいですが長く安定的に走れます。
これを人間に当てはめると、糖質をほとんど使わずに脂質や体脂肪を使って走ると言うことです。。
糖質を使わないエネルギー機構は、体脂肪をメインにエネルギーとして使うので肥満解消にもなりますし、糖質を大量に取る必要もないので血糖値の乱高下も抑えられ健康にもいいです。
ライド前に糖質を摂らなければ、血糖値が上がらないので、乗り始めてすぐに脂質がメインエネルギーとなります。
ライド前に摂ってしまっても、乗り始め最初にダッシュを繰り返しグリコーゲンを枯渇させることで糖質を帳消しにできますが、インスリンは分泌されてしまっています。
普通の人が普通にロードレーサーに乗るくらいの強度なら脂質のエネルギーだけで問題なく賄えます。
糖質をエネルギーとしないので、ハンガーノックにもなりません。
私自身、徹底的に断糖をして1週間で1000km乗り込んだこともありましたが、何の問題もありませんでした。
でも少しは糖を摂らないとやっぱり低血糖になってしまうのではないか?と不安に思われる方もいると思いますが、人間の身体は糖を摂らなくても血糖値を上げる生理的手段を持っています。
血糖値が低下すると、すい臓が感知し【グルカゴン】というホルモンが血液中に分泌され肝臓に貯蔵されているグリコーゲンをグルコースに分解させ血糖値を上昇させます。
副腎髄質からは【アドレナリン】も分泌され、これも血糖値を上昇させます。
脳下垂体は副腎皮質を刺激し【糖質コルチコイド】というホルモンを分泌させ、筋肉のタンパク質を分解しグルコースの合成をして血糖値を上昇させます。。
このような生理機能により運動や空腹によって血糖値が下がっても,低血糖になることはありません。
むしろ糖質を摂取しインスリンが分泌された状態で、糖質をメインエネルギーとしてガンガン消費すると、インスリンと糖消費の相乗効果でハンガーノックが起きやすくなります。
糖質コルチコイドの作用により筋肉が分解されてしまうからダメだと言う人もいますが、トレーニングの効果でその後に筋肉の同化(合成)が起きるので一時的に分解されても問題ないです。
糖質を摂らなければ、脂質、体脂肪をエネルギーとして使えて、生理作用により血糖値も下がらず、安定した血糖値でエネルギー供給するので、運動効率がものすごくよくなります。
ただ、糖質を摂った方が良い人もいます。
無酸素系、乳酸系のダッシュを途中で何本も取り入れるような人や、ピストで高ギア高トルクで山を登る時は、最大筋力を発揮するために糖質が必要になります。
ロードレーサーでも高強度で乳酸系レベルの限界のペースを維持するような人には糖質は必要となるかもしれません。
私自身もピストで遠乗りや山登りをしましたが、ダッシュ練習を入れない時は糖質を摂らない方が身体が最後まで楽でした。
糖質はパワー系には欠かせないエネルギーですが、有酸素系では重要ではありません。
有酸素系でも必要ですが、生まれ持った生理的機能により血糖値は十分維持できます。